あるコラムの中に「学習意欲の向上」について記載された文章がありました。非常に興味深いお話なので、ご参考にして下さい。

 例えば、普段は「こらっ、たけし、廊下を走るな!」と乱暴な言葉遣いをしている先生でも、全校生徒を前にした朝礼台の上では「みなさん、廊下は走らないようにしましょう。」と丁寧な言葉遣いになります。また、おとなしかった子がチームのキャプテンになったとたん、意外なリーダーシップを発揮するということは良くあることです。 お父さん方でもそうでしょう。休日に家でパジャマ姿でくつろいでいる時と、スーツ姿で仕事しているときは別人ですよね。このように、人は、その場の「形」に化学反応を起こして自らを変えるシステムを内蔵しているのです。
 このシステムを子供の学習に利用します。この方法は、子供を短期間で変える魔法のような効果があります。方法は二つ。
1 「形」を壊すこと
2 「形」を作ること
「人は、心の中の限界を超える成果をあげることはない」
人は、自分が無理だと思っていることは決して実現させることはできません。なぜなら、心の中の「形」に化学反応をしてしまうからです。それどころか、人は「無理なことを証明する方向」に行動する性質を持っているのです。これをメンタルブロック、日本語で内制止と言います。
 もちろん子供たちも同じシステムを持っています。私たちは、子供たちにあえて高い目標を提示することがあります。
「今度のテストは九十点を目指そう」
「順位を三十番上げよう」
 子供たちの反応は一様に、「え~っ、無理だよ」です。無理だという「形」を心の中に持っている間は絶対に無理です。ですから「そんなことはない、こうやって勉強すれば大丈夫、君はその能力があるから信じてがんばれ」と、何度も何度も呪文のように声を掛けます。そうすると不思議なことに子供たちもその気になってきます。心の中の壁が壊れ始めるのです。そして、テストで二十番でも順位が上がれば、もう子供の顔つきが変わってきます。そうなれば大丈夫。行動して意欲を作り出すという「好循環」に一歩踏み込んだ証拠です。
 「やればできる」という言葉があります。ほとんどの大人は、その使い所を間違っています。子供が「やる」前に言ってしまうのです。それでは何の効果もありません。逆に、いよいよ「やる気」(意欲)を失いかねません。この言葉は子供が「やった」後に、何か成果をあげた後に使うのです。
「ほら、やればできるじゃないか。」
お父さん、お母さん、子供の心に限界を作らせていませんか。
例えば「俺の子だから、この成績でもしょうがないか」とか、「私もあまり勉強しなかったからね」のように。
 親は無意識のうちに自分を基準にして子供の限界を考えてしまいます。そのことが時として子供の伸びる可能性を阻害してしまっているのです。まず、心の中の限界という目に見えない「形」をぶち壊すこと。それが子供の学習意欲をわき起こす第一歩です。そうして自由になった心に、今度は目に見える「形」を持たせるのです。